2026年2月末、Shopifyは「従来のお客様アカウント」を非推奨(deprecated)にすると発表しました。すでに新規ストアでは選択できなくなっており、今後の機能追加はなく、テクニカルサポートも終了しています。
この記事にたどり着いた方のストアの管理画面には、こんなアラートが表示されているのではないでしょうか。

従来のお客様アカウントを使用しています
従来のお客様アカウントは非推奨になりました。より安全なログインや、アプリを使用したノーコードのカスタマイズを利用するには、お客様アカウントをアップグレードしてください。30日以内であれば元に戻すことができます。
このアラートを見ても何がどうなるのか、何をしなければいけないのかわからない方も多いのではないかと思います。
そこで本記事では、このあとご自身のストアに起こることと、対応しなければいけないことを解説します。
「従来のお客様アカウント」とは
Shopifyには、一般的なECサイトでよく実装されている会員登録・ログイン機能とマイページでの注文履歴確認・お届け先編集といった機能があります。このマイページにログインする機能を、Shopifyでは「お客様アカウント」と呼びます。名称がややこしいのですが、「お客様アカウント」はアカウントのことではなく、マイページ機能のことです。
お客様アカウントには「従来のお客様アカウント」と「新しいお客様アカウント」の2種類あり、それぞれ下記のような違いがあります。
| 従来のお客様アカウント | 新しいお客様アカウント | |
|---|---|---|
| ログイン方法 | メールアドレス+パスワード | メールアドレス+6桁の認証コード |
| デザイン | テーマごとに異なる(ストアのデザインに合っている) | 全ストア共通(Shopify標準のデザイン) |
| Liquidでの編集 | できる | できない |
・「従来のお客様アカウント」のログイン画面(ストアのテーマデザイン)

・「従来のお客様アカウント」のマイページ(ストアのテーマデザイン)

・「新しいお客様アカウント」のログイン画面(Shopify標準デザイン)

・「新しいお客様アカウント」のプロフィール画面(Shopify標準デザイン)

かつては全てのストアが「従来のお客様アカウント」でしたが、2023年1月のアップデートで「新しいお客様アカウント」が導入され各ストアで切り替えが可能になったため、現在はストアによってアカウント方式が異なります。
ご自身のストアはどちらのアカウント方式だったでしょうか。
既に「新しいお客様アカウント」になっていれば特に対応は必要ありませんが、「従来のお客様アカウント」であれば対応が必要な場合があります。記事の続きを読んで一緒に確認しましょう。
今どういう状況なのか
この記事の冒頭でお見せしたアラート表示は、なぜ最近になって表示されるようになったのでしょうか。事実を時系列で整理します。
| 時期 | 何が起きたか |
|---|---|
| 2026年2月26日 | Shopifyが従来のお客様アカウントを非推奨に。今後の機能追加とテクニカルサポートを終了。 |
| 2026年7月現在(新規ストア) | 従来のお客様アカウントは選択できない |
| 2026年7月現在(既存ストア) | まだ使える。(ただし機能追加・テクニカルサポートは終了済み。) |
| 2026年内 | 最終的な廃止日が発表される予定 |
| その後 | 未定 |
現段階では「従来のお客様アカウント」は、「非推奨」であって、「廃止済み」ではありません。
ただしShopifyは「できるだけ早く最新版へアップグレードすること」を強く推奨しており、いずれは「従来のお客様アカウント」が廃止されるため、アラートが表示されるようになったと思われます。
廃止されるまでの猶予がどれだけあるかは年内の発表を待つしかない、というのが現状ですが、なるべく早く「新しいお客様アカウント」への移行を検討しましょう。
移行すると、具体的に何が変わるのか
① ログインの手順が変わる
今(従来のお客様アカウント):お客様がメールアドレスとパスワードを入力してログインします。パスワードを忘れた場合は再設定メールを送ります。
移行後(新しいお客様アカウント):
- お客様がメールアドレスを入力する
- メールに6桁の認証コード(使い捨てのワンタイムコード)が届く
- そのコードを入力してログインする
パスワードを覚える必要がなくなり、パスワード忘れによる離脱もなくなります。一方で、ログインのたびにメールを開く必要が出てきます。
場合によっては、「面倒になった」という声が出ることがあります。ただし新しいアカウントはGoogle・Facebook・Shop Payでのログインにも対応するため、トータルではログインのハードルは下がるケースが多いようです。
また、移行後はログイン方法そのものが変わるため、お客様への事前告知と、切り替え直後の問い合わせ対応が発生することが想定されます。移行のタイミングを決める際は、案内の準備やサポート体制まで含めて計画しておきましょう。
② 「会員登録」という手続きがなくなる
これが日本のストアで最も影響の大きい変更です。
今(従来のお客様アカウント):会員登録フォームがあり、そこで利用規約への同意チェック、生年月日、性別などを取得できます。アカウントを持つには、登録するか招待を受ける必要があります。
移行後(新しいお客様アカウント):初回サインインで自動的にアカウントが作られるため、「登録する」という手続き自体がなくなります。言い換えると、初回サインインがそのまま会員登録を兼ねる形になり、「登録フォームに情報を入力して申し込む」というステップだけがなくなります。
結果として、こうなります。
- 利用規約への同意チェックボックスが置けない
- 生年月日・性別などの属性情報を、登録のタイミングで取得できない
- 「新規会員登録」をきっかけにしていたステップメールの起点が変わる
属性でセグメントを切ってメール配信をしているストアは、取得の方法そのものを設計し直す必要があります。
③ アカウントページのデザインの自由度が下がる
今(従来のお客様アカウント):Liquid(コード)でテーマを自由に作れます。ストア全体のデザインと統一されています。
移行後(新しいお客様アカウント):Shopify標準のデザインで固定されます。Liquidでは編集できず、アプリによる拡張(ブロック)で要素を足す形になります。
ただし、まったく変えられないわけではありません。ロゴ・ブランドカラー・フォントといった外観は、チェックアウトと共通のエディタにあるブランド設定から、ストアに合わせてある程度調整できます。また、編集できる範囲は今後のアップデートで広がっていく可能性があります。
④ 動作しなくなる機能や仕組み(公式に挙げられているもの)
Shopify公式が明示している「移行後に動作しなくなるもの」は次の通りです。
| 動かなくなるもの | 補足 |
|---|---|
| コードのカスタムなど、標準テンプレート外で作った独自のログイン・登録画面 | 作り込んでいるストアは要対応。 |
| ワークフローのトリガーと自動化 | Flowなどで従来アカウントを条件にしている場合、条件を更新する必要があります。 |
| customer_account_status データフィールドを使った顧客セグメント | 「アカウント有効/無効」で絞り込んでいる場合は見直しが必要です。 |
| マーケットごとのカスタムドメイン | 多言語・多通貨でドメインを分けている場合、移行後はドメインが統一されます。 |
| ブロックによるサインインページのカスタマイズ | ログインページに要素を追加している場合、「新しいお客様アカウント」に移行可能か確認が必要です。 |
| Multipass 認証 | 後述 |
なかでも見落としやすいのが顧客セグメントです。Shopifyではcustomer_account_statusというデータフィールドを使って、アカウントが「有効/無効/招待中/招待辞退」のどの状態かで顧客を絞り込むことができます。ただしこのフィールドは「従来のお客様アカウント」専用で、アップグレード後はこれを使ったセグメントが意図した通りに動作しなくなることが公式ヘルプに明記されています。
例えばcustomer_account_statusが「有効」であるアカウントに絞ってメール配信をしている場合、移行後はセグメントに該当するお客様がいなくなり、配信が誰にも届かなくなります。同じ絞り込みを再現するフィルターは用意されていないため、購入履歴やメール購読の有無など、別の条件でのセグメントの組み直しが必要です。
⑤ その他ログインやアカウント画面に関わるアプリは、個別に確認が必要
会員ランク・ポイント・ウィッシュリストなど、ログインやアカウントページに機能を追加するアプリを使っている場合、その機能が移行後もそのまま使えるとは限りません。
従来のアカウントページはテーマ(ストアのデザインテンプレート)の一部だったため、多くのアプリはテーマに組み込む形で機能を追加しています。このタイプのアプリは「新しいお客様アカウント」には引き継がれないため、「新しいお客様アカウント」への対応状況と、データや設定が移行されるかを、アプリ会社に問い合わせて確認してください。アプリ会社の状況によっては返答に時間がかかるかと思いますので、早めに問い合わせておけると安全かもしれません。
なお、2026年7月時点では、主要なアプリでも新しいお客様アカウントへの対応が「対応中」の段階にあるものが少なくなく、アプリ側もまだ過渡期です。未対応だった場合は、対応予定の有無と時期まで確認しておくと判断材料になります。
なお、外部の会員基盤とMultipass認証で連携している場合も同様です。Multipassは新しいアカウントでは使えなくなり、OAuth2.0 + OIDC 準拠のIdP連携(SSO対応)に置き換わります。該当するストアは作り直しが必要になるため、まず自社が外部の会員基盤との連携を行っているかの確認から始めてください。
⑥ 新たに追加される機能
Shopifyの公式比較によると、次の機能が「新しいお客様アカウント」でのみ利用できます。
| 機能 | 新しいアカウント | 従来のアカウント |
|---|---|---|
| 支払い方法の保存・お客様による管理 | ◯ | × |
| セルフサービス返品 | ◯ | × |
| ストアクレジット(ストア内で使えるクレジット)の使用 | ◯ | × |
| 再購入(Buy Again)ボタン | ◯ | × |
| B2B機能対応 | ◯ | × |
| Markets機能対応(通貨や販売国に従って表示を変更できる) | ◯ | × |
| プロフィールのお客様による更新 | ◯ | × |
| 注文履歴 | ◯ | ◯ |
| 保存済み住所(複数の住所を保存し、チェックアウト画面で選べる) | ◯ | ◯ |
移行は場合によっては手間のかかる作業ではありますが、得られるものもあります。特にセルフサービス返品は、問い合わせ工数の削減に直結します。
アップグレードせずに、「新しいお客様アカウント」を試す方法
移行準備は、このテストから始めるのが確実です。
管理画面のアラートにある「アップグレードをプレビュー」のリンクから、本番環境に影響を与えずに、「新しいお客様アカウント」の画面を確認できます。
やり方
- 「設定」→「お客様アカウント」のアラート内にある「アップグレードをプレビュー」をクリック
- 「新しいお客様アカウント」のログイン画面が開く
- テスト用の顧客アカウントでサインインして、実際の挙動を確認する
この方法であれば本番の設定を一切変更しません。お客様から見た体験を、移行前に自分の目で確かめられます。
「よく分からないから移行が面倒」という状態は、これで解消できます。まずはこの方法で確認することから始めるのがよいでしょう。
※ 注記:このプレビューのURLにはストア固有のIDが含まれています。ログイン画面への入り口が知られることになるので、社外に共有する際は注意してください。
早めにやるべきこと / アナウンスを待っていいこと
本記事の最も重要なポイントです。移行の実行は廃止日のアナウンスを待ってからでも間に合いますが、確認は問い合わせの返答待ちなどで時間がかかるため、早めに始めておくのが安全です。
早めにやるべきこと
| やること | 理由 |
|---|---|
| 「アップグレードをプレビュー」で新しい画面を見る | 判断の第一歩。本番に影響しません。 |
| 使っているアプリの対応状況を確認する | 最優先。問い合わせは返答待ちが発生しやすいです。 |
| アカウントページのカスタマイズを棚卸しする | 何が失われるか分からないと見積もりが立ちません。 |
| 顧客セグメントとワークフローを確認する | customer_account_status を使っている場合、既存の機能が動かなくなります。 |
| 会員登録フォームで取得している情報を洗い出す | 代替設計に時間がかかります。 |
| Multipass(外部基盤との連携)を使っているか確認する | 該当すると対応が重くなります。 |
アナウンスを待っていいこと
| 待っていいこと | なぜ待つか |
|---|---|
| 大規模なカスタマイズのあるアカウントページを作り直す | 期限が分かってから対応するべき範囲を逆算するほうが安全です。 |
| デザインの全面的な作り込み | 拡張の仕様が今後変わる可能性があります。 |
まとめ
「従来のお客様アカウント」はすでに非推奨です。新規ストアでは選べず、今後の機能追加もありません。最終的な廃止日は2026年内に発表される予定です。
まずは、管理画面のアラートにある「アップグレードをプレビュー」を開いて、新しい画面を確認することをおすすめします。
そのうえで、アプリの対応確認・カスタマイズの棚卸しなどを進めてください。これらは返答待ちや調査に時間がかかるため、期限が発表されてからでは慌ただしくなる可能性があります。
また移行自体は30日以内なら元に戻せます。いつかは必ず移行が必要なため、準備が整い、繁忙期でないタイミングであれば、期限を待たずに移行してしまうのも合理的な判断です。
よくある質問
「従来のお客様アカウント」は、いつ廃止されますか?
まだ決まっていません。Shopifyは2026年内に最終的な廃止日を発表するとしています。現時点では引き続き利用できます。
アップグレードは元に戻せますか?
30日以内であれば戻せます。管理画面のアラートにも明記されています。ただし何がどこまで復元されるかについて詳しい説明はないため、事前の検証は行ってください。
アップグレードする前に、新しい画面を確認できますか?
できます。管理画面のアラートにある「アップグレードをプレビュー」から、本番の設定を変更せずに「新しいお客様アカウント」を確認できます。テスト用の顧客アカウントでサインインすれば、実際の挙動も試せます。
今すぐ移行すべきですか?
準備(アプリの対応確認・カスタマイズの棚卸し)は今から始めてください。移行の実行は、準備が整っていて繁忙期でなければ、期限を待たずに進めても構いません。
お客様のパスワードはどうなりますか?
「新しいお客様アカウント」はパスワードを使用しません。お客様には認証コードによるログインへの切り替えを案内する必要があります。
出典・参考
- Shopify Changelog「Legacy customer accounts are deprecated」(2026年2月26日)
- Shopify ヘルプセンター「従来のお客様アカウントからのアップグレード」
- Shopify ヘルプセンター「お客様アカウントと従来のお客様アカウントの比較」
- Shopify Developer Changelog「Built for Shopify requirements for Returns and exchanges apps and Subscription apps」(2026年6月17日)
※ 注記:いずれも2026年7月時点の情報です。仕様・スケジュールは変更される可能性があるため、最新は各公式ページでご確認ください。